第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(10)

『吉原の錦』/橘 耿平 

 あらすじ&コメント

心根の美しい吉原の花魁(おいらん)・若里のもとに、新三と名乗る若い男が客としてやってくる。会ったときから心惹かれる若里であったが、じつは新三は薩摩藩主で、幼いころから若里の父に学問を教わっていた身。悲運にも行方がわからなくなってしまった恩師の娘を探していたのであった。新三は若里を救出しようと奔走するが……。

幕末の吉原の様子が子細に描かれていて、非常に興味深く読ませていただきました。時代小説としての面白さは多分にあるものの、惜しむべくは後半、吉原を抜けたあたりから、前半の勢いがなくなり、躍動感が失速してしまったように思います。吉原を題材にしたラブストーリーである以上、もっと男女の恋愛の苦しさを最後まで描ききってほしかった。ハッピーエンドが悪いわけではないけれども、若里と新三、そんなに簡単に幸せになれるものなのか違和感が残りました。

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